第1章

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 言って自分でも笑ってしまう。 「でも、そういう所も含めて好きですよ」  小学生相手にこんなことを素直に言うのはかなり恥ずかしいが、四季さんは真剣な顔をしているので正直に答えるべきだろう。 「そういうものですか?」 「そういうものですよ」 「……私、あんまり人を好きになるとかよく分からないんです」 「その年だったらまだそんな物じゃないですか?」  俺の言葉に四季さんは納得いかないのか首をかしげている。 「でも、同級生の女の子は誰それが好きって言いあってますよ」  確かに女の子は男子よりも精神年齢が高いことが多い。男子が秘密基地とか言ってはしゃいでいる頃に女の子はそういう話をしているものなのかもしれない。 「んー。そうですねぇ」 「私、ちょっと分からないんですよ。恋愛とか誰それが好きだとか言っている暇があったら他にやることが沢山あると思いますし」  さて、どうしようと思う。四季さんの言っていることはもっともではあるが、決して恋愛を軽視してもいいということはないだろう。それに、小学生でも恋愛をしているその同級生たちはその恋に今真剣なのだ、その気持ちを否定するような事はしてほしくはないと思う。 「まぁ、人それぞれですしね。恋愛というのはタイミングが大事? な気がしますよ。俺としては。運命というつもりはありませんが偶然と時期は多いに関係していると思います。恋愛なんて誰かを好きになろうとして好きになるものではありませんし、いや、恋愛をしようとして恋愛する人もいるんでしょうけど。でも、それもタイミング次第だと思いますよ」  抽象的というか灰色の回答になってしまった。しょうがない、もともと俺はそういう人間だ。 「有馬さんとお母さんもそうですか?」 「んー。俺たちは特殊な部類ですからねぇ。でも、そうだと思いますよ。俺たちはあの時、あの場所で出会わなかったら恋愛にならなかったかもしれません。俺は、その人とならいつであっても恋に落ちるだろうなんて感覚は持っていませんからね」 「そうですか……」
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