第1章

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「でも。結果的に言えば俺とゆかりは恋に落ちたんだからそういうものなんでしょうね。なるようにしかならないし、なるものはなるんですよ。だから、深く考えるなとは言いませんが焦らなくてもいいと思いますよ。四季さんにはまだそのタイミングが来てないだけなのかもしれません。四季さんもその時になれば突然恋に落ちるかもしれません」 「そんなものでしょうか?」 「そんなものですよ。恋はするものじゃなくて落ちるものですから」  恋愛感情をコントロールしようとするのはかなり難易度が高い事ではあるだろうと思う。  四季さんは納得したのかしていないのか微妙な顔をしたがそれ以上は何も言ってこなかったので自分の中で何かしらの答えを出そうとしているのかもしれない。 「車回してきますよ」  言って店を出る。裏手にある車庫のシャッターを開けていると向かいの細道を黒いワンボックスカーが走っているのが見えた。妙だ。何が妙なのか分からない。いや、ガラスが黒くふさがれている。中が見えないようになっている。この細道を入った先には家の店しかないはずだ。店の駐車場を見るとワンボックスカーが停まり中から数人の人物が降りてくる。明かにおかしい。目出し帽をかぶっている。嫌な予感しかしなかった。すぐに店内でガシャンと何かが倒れる音がした。 「四季さんッ……」  思わず叫びそうになって口を手で押さえた。ここで騒ぐわけにはいかない。店の横手の窓からのぞき込むとカウンターを挟んで数人の男が四季さんと向かい合っていた。一人の男が手に持った拳銃を四季さんに向けていた。四季さんは気丈にふるまっているが何かしら脅迫されているのは間違いないようだった。 なんだあいつらは。警察に電話かと思いポケットに携帯電話を探す。思わず舌打ちをした。携帯は店内のカウンターに置いてきてしまったのだ。走って助けを求めに行ってもいいが、時間がかかる。その間四季さんが無事とは限らない。
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