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仕方ない。俺は窓からそっと離れると店の裏手に向かう。あの男たちがこの店の金を狙ってきたとは思えない。おそらく別の目的、おそらくゆかりの実家に何かしら関わりのある人間なのだろう。つまり、目的はゆかり自身ということなのだろう。人質か何かにするつもりなのかもしれない。つまり、奴らの目的は達成されていないので、奴らが穏便に帰ってくれることは無い。四季さんを人質にゆかりを拉致するのが奴ら的には常套手段だろう。
店の裏手には出入り口が一つある。目出し帽の男たちは四人組だった。表の入り口に二人四季を見張っているのはボスらしき人物一人。残り一人はおそらくこの裏口を抑えにくるだろう。裏口の扉が開くすぐ裏側に壁に貼りつくように立つ。数分後、ゆっくりと扉が開いて男が姿を現した。小さくあくびをしている。おそらく四季さんがうまく言いくるめてくれたのだろう。俺の存在をこいつらは考えていないようだった。
男が扉を閉めると同時に後ろから首に腕を回して口を手で塞ぐ。
「ぐっ」
鈍い声を出して男が俺をにらみつけて暴れようとする。しかし足を絡めて力が入らないように体を固定する。男が次の判断をする前に腕に力を入れる。一分ほど男はもがいていたが全身から力が抜けて崩れ落ちた。気を失ったのだろう。
「意外と体が覚えているものだな」
今しがた絞め落とした男と自分の両手を見比べる。あまり、昔の事を思い出すのはやめよう。昔よりも今をどうするかだ。
気を失っている男を車庫の中に引きずり込んで適当に手足と縛ってさるぐつわをかませる。ゆっくりと店を周りこんで正面に回る。正面の扉に二人。ちょっと面倒だな。二人を相手にしても負ける気はしないが、どうしても中の奴らに気が付かれてしまう。どうするかと考え込んでいると店の扉が開いて四季さんが顔を出した。
「中でコーヒーでも飲みませんか。どうせ母は昼まで帰ってきませんしそんなところに男二人が立っていたら怪しまれますよ」
男どもが顔を見合わせる。店内にいるおそらくボスである男に何かを聞いているようだ。拳銃を持った男が顔を見せた。
「いいさ。見張りは一人で言い。しかし、面白いなお前。少しは怖くないのか?」
ボスがくぐもった笑い声をあげる。
「怖がったところで何も解決しませんし。それとも私が泣き叫べば逃がしてくれるんですか?」
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