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「行き先違ってホッとしてるって顔……てことは、植物園に行くんや」 もう止せばいいのに、自分の口が止められない。 「この出口付近にあってデートっていうたら、他は植物園くらいしかないもんな」 「そやから、デートとちゃいますって!」 「植物園はビンゴなんやね?」 素直すぎる金太郎ちゃんは、実に簡単に俺の誘導に引っ掛かってくれる。 困って無言になった表情も……可愛い。 言ったら殴られそうだけど。 って、いつの間にか、「かいらし」が「可愛い」に進化してしまっているな……。 「今やったら何が見頃なんやろね」 「……」 「植物園なんて、もう長いこと行ってへんなあ」 「……」 隣を歩きながらあれこれ話しかけてみたけど、彼女は口を引き結んで、硬い表情のまま早足で歩いていく。 黙秘を決め込むつもりですか……。 でも、こっちもそう簡単に引かないよ。 こうなったら、見届けるまで、だ。 植物園で金太郎ちゃんが待ち合わせをしている相手は、ヤツに違いない。 今俺の中で99.9%の確信をもった予感が、100%の事実となるのかをこの目で確かめてやる。 その先の自分がどうなるのかなんて全く予想がつかないけど、確かめずにはいられない。 出口への階段を登り切ってすぐ、道路をはさんだ先に見える植物園のゲートへと目を凝らした。 「やっぱり」 つい、声に出してしまった。 樹だ。
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