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精霊の悪戯か、少しばかり強く吹いた風に目を細める。
波打つ髪を背中へと流す。
そんな些細な動作にさえ、思わず目を奪われてしまうモカであったが、不意に姉の視線が何かに気付いたように遠方へと投げ掛けられた。
「・・・?」
その視線の先を辿っていくが、モカの目には何も写らない。
「ティルメリアの爆乳千里眼」
の異名を取る姉の視力は5.0。
恐らく自分には見えない何かがあるのであろうと目を凝らしていると、緩やかなカーブを描く小道の向こうに米粒程の大きさではあるが、真っ白なローブを着た男性がこちらに向かっているのが見えた。
そして、足元から順に視線を上げていくと、その人物の正体を如実に示すアイテムが存在する。
それは遠目から見ても、陽の光を反射し、キラキラと虹色に輝く・・
メガネだった。
「長老様だ!!」
伸び上がって大声で叫ぶモカの声が聞こえたのか、顔面を七色にフラッシュさせながらブルマンは手を振って寄越す。
「・・あのメガネを針の先に付けたら魚が釣れそうね」
と、カカオが無感動に呟いてからおよそ3分後。
「最高のファッション」
を本人の知らないところで
「ルアーの代わり」
と評されてしまったブルマンは、額に浮かんだ汗を拭いながら二人の元へとたどり着いた。
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