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「わたし、退屈なんですっっ!!」
遠慮の欠片もない、あまりにストレートな物言い。
それを聞いたブルマンは目を丸くして言葉を失い。
次いで弾けるように大声で笑いだした。
「ガハハハ!退屈と来たか!そうかそうか、ガハハハハ!!」
ひんやり冷えた大剣の柄を額に押し当て、目眩をこらえるカカオの横で、ブルマンの高らかな笑い声が雲一つない青空へと吸い込まれていく。
イルミネーションのように《ゆめりぎ》の光が明滅する中、ふと笑いを収め、ブルマンはモカの顔を覗きこんだ。
それと同時に、どこで仕入れてきたのか全く不明な奇抜メガネの奥に真摯な光が宿る。
「じゃがのぅ、モカよ。これは本当に大事な役目なのだよ?それこそティルメリアだけでなく、この世界--ウェルシニアにおいて最も大切と言っても過言ではないほどにの」
優しく諭すような。
しかしそれでいて普段の弛い佇まいとは異なる、静なる威厳を内包したその言葉。
だが、そんな真面目なコメントは、残念ながら少女の心に砂一粒ほどの感銘も与えなかったらしい。
ブルマンの言葉にぷうと頬を膨らませたモカの顔には、言葉で発するより明確な
「子供だと思ってバカにして」
という気持ちが貼り付いていた。
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