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「・・これ以上の説得は無駄のようね。ならばもう私から言う事は何もないわ。・・モカ、あなたも一緒に来て頂戴。」
「ほんとに!?」
パッと顔を輝かせたモカに、カカオは釘を刺す。
「但し、絶対に無茶はしない事。危なくなったらまず自分の身を守る事を考えなさい・・って、ちょっと!?」
言葉の途中で抱きついてきた妹に抗議の声を上げようとするが、しっかと抱きついたモカは少しばかり自分より背の高い姉を見上げ、ニコリと笑って呟いた。
「ありがとう、お姉ちゃん」
「(・・ズルいわね)」
モカの笑顔を眩しそうに見つめながら、カカオは思う。
「(それは私が言うべきセリフなのに)」
気恥ずかしさも手伝ってか、言葉にする代わりに、くしゃりと栗色の髪を撫でたカカオは遠く北の空を見つめる。
その横でモカも姉と並び、同じ空を見上げた。
この空の遥か向こうに広がる世界。
そしてそこに立ち塞がるであろう、数々の困難に立ち向かわんとする二人の旅立ちを祝福するかのように、澄んだ声を上げて二羽の小鳥が東雲の空へと飛び立っていく。
「・・じゃあ、そろそろ行きましょうか」
「うん」
カカオ=スターバクス。
そしてモカ=スターバクス。
四宝と呼ばれる武具を扱い、夢喰いを倒す使命を負った二人の姉妹は、こうして生まれ育った故郷の地を後にしたのだった。
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