第3章 姉と牛と神鳥と

2/39
103人が本棚に入れています
本棚に追加
/404ページ
「とりあえず、今後の予定を話しておかなければならないわね」 モカに水筒を渡しながら、カカオは木の枝を使って地面に地図を描き出す。 生まれ育ったトラル村を離れてしばし。 姉妹の姿は樹齢500年はあろうかという大木の下にあった。 受け取った水筒で喉を潤しながら、モカは姉が操る枝の動きを目の端で追いかける。 「ティルメリアをはじめとして、この世界には四つの大陸があるのは知っているわね?南から順にティルメリア、ディングル、ザクセンと続き・・私たちが目指すガルディアはここにある」 そう言ってカカオは木の枝でピシリと北端に位置する一点を示した。 「ガルディアは夢喰いに滅ぼされちゃったんだよね・・」 「ええ、四千年以上も前にね」 今から四千年以上の昔。 長きに亘る眠りから目覚めた夢喰いーーゼフロスは、その強大な力をもって世を蹂躙した。 標的となったのは武闘家トントロが創り上げた、己の肉体の極限に挑む者たちの聖地、ガルディア。 本来、四つの大陸には夢喰いの襲撃を受けた際、それぞれが協力体制を取る約定が結ばれている。 だがこの時、ガルディアは残る三大陸に助けを求めることはしなかった。 否。 自らの力を過信するあまり、協力自体を拒んだのである。 その結果。 禍々しい双翼を翻し、魔龍の如く天空を疾駆するゼフロスに抗しきれず、ガルディアはものの数日で灰燼に帰したのだった。 --守るべき夢宿木と共に。
/404ページ

最初のコメントを投稿しよう!