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モカとカカオの当番は19時まで。
そこから先は男たちが交代で番をすることになっている。
陽の傾きから察するに交代まではあと30分強という所だと思うが、孤独という名の恐怖と戦うモカにとっては、1分が1時間に匹敵するほど長く感じられた。
「うう・・なんだか怖くなってきた・・って、うひゃあっっ!!」
膝小僧を突き合わせて小さくなるモカの首筋を、冷たい風がヒュウッ・・と撫で、思わず悲鳴がこぼれる。
両手で頭を抱えて俯いた拍子に、悲鳴だけでなく、涙も少しこぼれ落ちそうになったモカの影に、絵の具を落としたような色合いが加わった。
それは未だ理由もわからぬまま、番を命じられた《ゆめりぎ》の光。
辺りが暗くなるに従い、樹に宿る蛍火のような光は明るさを増す。
ぽう・・ぽう・・
光っては消え、消えては光る不思議な瞬きが、暗く沈むモカの横顔を鮮やかに彩った。
「ゆめりぎは、陽が沈み行く瞬間が最も美しいのじゃよ」
とはティルメリア観光大使でもあるブルマンの弁であるが、生憎今のモカにその光景を楽しむ余裕など、1ミリたりとも存在しない。
ひたすら縮こまり、時が過ぎるのを待つモカの耳に、微かな異音が聞こえてきたのはその時だった。
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