Episode0-1 カカオとモカ

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モカとカカオの当番は19時まで。 そこから先は男たちが交代で番をすることになっている。 陽の傾きから察するに交代まではあと30分強という所だと思うが、孤独という名の恐怖と戦うモカにとっては、1分が1時間に匹敵するほど長く感じられた。 「うう・・なんだか怖くなってきた・・って、うひゃあっっ!!」 膝小僧を突き合わせて小さくなるモカの首筋を、冷たい風がヒュウッ・・と撫で、思わず悲鳴がこぼれる。 両手で頭を抱えて俯いた拍子に、悲鳴だけでなく、涙も少しこぼれ落ちそうになったモカの影に、絵の具を落としたような色合いが加わった。 それは未だ理由もわからぬまま、番を命じられた《ゆめりぎ》の光。 辺りが暗くなるに従い、樹に宿る蛍火のような光は明るさを増す。 ぽう・・ぽう・・ 光っては消え、消えては光る不思議な瞬きが、暗く沈むモカの横顔を鮮やかに彩った。 「ゆめりぎは、陽が沈み行く瞬間が最も美しいのじゃよ」 とはティルメリア観光大使でもあるブルマンの弁であるが、生憎今のモカにその光景を楽しむ余裕など、1ミリたりとも存在しない。 ひたすら縮こまり、時が過ぎるのを待つモカの耳に、微かな異音が聞こえてきたのはその時だった。
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