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カタン・・カタ・・カタ・・
「なななな何・・!?」
はじめは、気のせいだと思った。
否、思いたかった。
だが、何か乾いたものがぶつかるような、そして不気味な笑い声のようなその音は、どう考えてもモカの背後から聞こえてくる。
すぐさま頭の中に周囲の状況を思い描いてみるが、今の状況で背後に存在している物といえば《ゆめりぎ》と呼ばれる大木ただ一つのみ。
「おーれーはウルトラー!!ウルトラー・・ドーン!!(どーん!!←エコー)」
自分を鼓舞するため、心の中に永遠の応援歌である
「俺の好物はウルトラ丼。なんつって。(ウルトラドンのテーマ)」
を流してみるが、体の奥底からせり上がってくる小刻みな震えを止めることはできない。
「(どどどどどうしよう・・)」
このまま交代の時間まで凌ぐか、未だ戻らぬ姉を呼びに行くか。
二者択一の選択を強いられたモカだったが、どちらもいつもの如く消極的な意見であることに気付き、両手で頬をピシャリと叩いた。
「わ、わたし一人でも大丈夫だもん!!」
自分に言い聞かせるように声に出し、揺らぐ決意に可能な限りの補強をしてモカは勢いよく振り返った。
振り返りすぎて首が《ゴギュリ》と異音を発したが、今はそんな事を気にしている場合ではない。
だが、心臓が飛び出しそうなほど激しいビートを刻むモカの前に現れたのは・・
いつも通りの《ゆめりぎ》の姿だった。
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