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「あ、あれ・・?」
ぽかんと口を開けて停止するモカの前で、幹に取り付けられた《開かずの扉》がカタカタと風に揺られている。
「なぁ・・んだぁ・・・」
ヘナヘナとその場に崩れ落ちるモカ。
だが、その姿を嘲笑うように扉は
カタ・・カタカタ・・
と乾いた音を立て続けている。
そうまるで・・
誰かを呼び寄せるかのように、執拗に。
「そう言えば・・・お姉ちゃんも長老様も教えてくれないけど、この中って何が入ってるんだろう?」
なぜ急にそんな事を思い立ったのか、自分でもわからない。
だが風に乗って響く、呼び声のような旋律を耳にしている内に、モカの心の中はいつしか《開かずの扉》に対しての好奇心で一杯になっていた。
ゴクリと唾を飲み、両手で長槍を握りしめたまま、ゆっくりと《ゆめりぎ》の元へと歩み寄る。
いつもは制止してくれる姉が居ないためか、一人でも何かしらの結果を出せる事を証明したかったのか・・
気が付けばモカは、開かずの扉の鍵に手を伸ばしていた。
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