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解錠するための鍵は
「いつか必要になるじゃろう」
と丸一週間かけて覚えさせられた、謎の言葉と共にブルマン長老から受け継いでいる。
「・・・・。」
モカは首から大事に下げていた鍵を取り出し、ゆっくりと鍵穴に差し込んだ。
いつの頃から使われているのかわからない、随分と古びた錠前だったが、
カチャリ・・
と思いの外軽い音を残し、抵抗なく鍵が開く。
「・・・っ!!」
何が飛び出してきてもいいように、長槍を構えたモカだったが、鍵が外れたはずの扉はウンともスンともニャンともいわない。
「・・あれぇ?」
恐る恐る近づき、キィ・・と扉を開いたモカの目に飛び込んできたものは、およそ樹の内部とは到底思えない・・
どこまでも真っ黒な虚無の世界だった。
「ななな、なぁんだ!!な、何もないじゃん!!もぅ!いやん、バカぁん!!」
幹の内側に、光一筋すら射さない漆黒が広がっているという異様な光景。
だが、極度の緊張の果てに何も起こらなかった安堵感、そして冒険を一人で成し遂げたかのような高揚感の前にはそれは些細な事でしかなかった。
正体の無いものを一人恐れていた気恥ずかしさも手伝って、顔を紅潮させたまま、モカはブンブンと長槍を振り回す。
「(お姉ちゃんが帰ってきたら、樹の中には何も無かったって教えてあげようかな。あ、でもそれじゃあ勝手に扉を開けた事がバレたら怒られるか・・)」
そんな事を暢気に考えていたモカだったが、ふとある事に気がついた。
周囲が・・
いつの間にか黒い霧のようなものに包まれていたのだ。
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