Episode0-1 カカオとモカ

8/45
前へ
/404ページ
次へ
「・・・・!!」 ほんの一瞬だけ静止した時間。 その空白の時間を塗り潰すかのように ゴヒュッ!! という死神が振るう鎌のような、無慈悲極まる風切り音が響き渡る。 「うひゃあっ!!」 思わず見事なまでの尻餅をつくモカ。 その頭上で、いつの間に出現したのか、抜き身の大剣がぴしり・・と一分の乱れもなく静止していた。 常識を遥かに超越した速度で抜き放たれた横薙ぎの斬撃。 それはおよそ剣が発したと思えない風圧と共に、モカの毛髪を数本ハラハラと舞い散らせる。 「ああああ危ないなっっ!カッパみたいな頭になったらどーすんの!?」 「・・その時は潔く《ザビエル》とでも名乗りなさい。というか・・今度やったら問答無用で頭が平らになるわよ」 身の毛もよだつ恐ろしい宣告を口にしながらも、ようやく口を開いた姉の姿に、モカは弾けるような笑顔を見せる。 そんな妹の様子を、怒った猫のように睨んでいたカカオだったが、やがて屈託のない笑顔に根負けしたように肩の力を抜いた。 「まったく・・あなたと居たら、ロクに瞑想も出来ないわね」 そう言って呆れたように肩を竦める姉の姿を、モカはニコニコ笑いながら見つめた。
/404ページ

最初のコメントを投稿しよう!

103人が本棚に入れています
本棚に追加