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圧し掛かるような分厚い鉛色の空の下、《草木一本すら生えない》と表現するにふさわしい荒涼とした大地に、乾いた風が吹き抜ける。
かつての住居と思しき、朽ち果てた瓦礫の山。
豊かな実りをもたらしたであろう畑の跡地などは、この地に多くの住民が生活していたことを窺わせるが、今は何一つとして生命の営みは感じられない。
時折、か細い指笛のような音を響かせる風に誘われるように狭い路地を抜けていくと、そこには巨大な何かに引き裂かれたかのように幾つもの無残な爪痕を残す荒野が広がっている。
何か大規模な戦いでも行われたかのようなその地の中心には、高さ50センチ程の小さな2体の石像が安置されていた。
片や三つ目の豚。
もう片方は翼の生えた蛇。
なんともこの情景にそぐわず、滑稽にすら思わせる組み合わせだったが、嘲笑を封じるに足る禍々しい気配を石像は漂わせている。
更に少しでも力のある人間が見れば、石像周辺の空間が強力な結界で覆われている事に気づいただろう。
突如、一際強く吹き付けた風が乾いた砂塵を巻き上げる。
それらが結界に絡みつく龍のように螺旋を描いた時。
小さな・・ほんの小さな音が結界の内側から染みだした。
パキ・・パキ・・ン・・。
何か硬質なものにヒビが入るような音。
その奇妙、かつ不気味な異音は、ゆっくりと、だが確実にその範囲を広げていく。
そしてそれに呼応するかのように、豚の石像に彫り込まれた三つ目が、妖しい光を放ったその時――。
バギンッ・・!!
一際重い音を立て、何かが・・儚く砕け落ちる音がした。
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