第九章

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Yシャツの袖に腕を通す 真人の 背中を見るのが好きだ 背筋の筋が浮き上がり 収縮して 解放される一連の動きに 見惚れてしまう 自分の背を 鏡で映し真似てみても 筋肉の質量の差か 芸術的な筋には程遠い まあ・・・・・・こんなものかな 程度の 筋肉が動くだけだ にしても、この痣が痒い ボリボリボリボリ あまりの痒さに 痣の上を掻き毟る俺へと 「栄一、駄目だろう」 眉間にシワを寄せ 駆け寄ってきた真人が 勢いよく 俺のYシャツを捲りあげた 「あー、ミミズ脹れになってるじゃないですか」 「だって、痒いんだよ」 「快方へと向かっているのでしょう。痒み止めの軟膏で我慢して下さい」 引っ掻いたせいで ジンジンする患部に 「つめたっ、い」 「すみません。次は気を付けます」 円を描いて 軟膏を塗り込む 真人の指の動きが厭らしい 壁によりかかって 甘い息を吐き すーっと脇腹を撫でる手に 「あ・・・・・・、ん」 腰が震える 壁についていた手で 口を押さえる俺の耳朶に 触れた唇が ピチャ 音をたて動いた 「心配で堪らない」
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