第九章

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「ごめん、黙ってるよう頼まれたんだ」 「事情は訊いた。SINOさんの実力でなく、優遇されてるからだと陰口を言わせないためだと」 実力で請け負うた仕事でも 噂の方を 真に受け落ち込んでしまう 忍くんの 性格を把握仕切ってる 佐藤営業部長の配慮で あの二人が 恋人同士と知る人は少ない 頷いた俺に 「その彼にSINOさんが連絡したんだ」 “良かったな” 大好きな人に 言って欲しくてかけたら 『しーちゃん、悪い。 『ちょっと祐輔。私といるのに電話なんかに出ないで、さっさと切ってよ』 後で、必ずかけ直す』 通話を切られてしまった 「それは・・・・・・、酷いな」 「だろ? 食欲もない、声を掛けても上の空、とてもじゃないが仕事を続けられる状態じゃない。かと言って一人で帰宅させるのも心配だってことで、木山部長に相談したんだ」 書類に目を落としたまま 話に 耳を傾けていた部長の 『佐藤が出張? どういうことだ』 不機嫌な声が響いた 『報告が遅れて申し訳ありません。実はですね、広報の者がモデルの機嫌を損ねまして、女性差別だと訴えてやるだの、SNSに投稿するだのと息巻かれたものですから、何とか、しなければと交渉しましてですね』 企画に呼び出された 広報部長が 鋭い目で見据えてくる 木山部長に 噴き出す汗をハンカチで 拭いつつ 続ける説明を
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