第九章

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水の入ったグラスが 乱暴な勢いで 左から右へと滑っていく えー・・・・・・と 今のは何 グラスを渡すことに どういった意味がある? 眉間に 深いシワを刻んだ真人に 目を向け 「勘違いするな」 ほんの少し 耳から浮かした手の平 「勘違い?」 「認めたわけじゃない。ただ、油断ならない友人を側に置いて暮らすことで、気を緩めずにいられると考えただけだ」 「お前、すげームカつく」 カチン 岩田が打ちつけたグラスを 乱暴に滑らせ 「現状維持だ。笑顔であり続ける限りはな」 受け止めた真人に 視線を向けた 「ご心配なさらずとも、目を奪われる美しい輝きは途切れることなく、永遠に光を放つと断言しておきましょう」 険悪さを消して 「マジ、うぜーお前」 軽口を 言い合う二人の優しさが 「失礼な反応ですね。俺は将来の展望をお伝えしただけだというのに」 真人の愛情が 胸の奥へ じわじわと染み入ってくる あ、ヤバい 鼻の奥がツンとして 滲む涙を 堪えきれそうにない 「桜田・・・・・・、コレで」 濡れた指の雫を 「汗、拭けよ」 汗として 拭き取ってくれた瞭ちゃん
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