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首を傾げながら
胸元の
ポケットに忍ばせた指先が
・・・・・・・・・あ
硬く冷たい
円状の輪に触れた
「これ・・・・・・って」
俺の左手をとり
「俺の人生の残りで目にする景色は栄一と同じ眺めであればいいと願い、合い鍵を回収しました」
薬指を
親指で擦る真人の顔が
「あなたの愛を得られる男であり続ける努力は惜しみません。一人で涙を流させたりもしないと誓う」
涙で滲んで見えにくい
「栄一・・・・・・」
背中へと
回された腕は強く
頬の
あたる胸は温かい
「指輪は、あのアパートを解約する覚悟を決めたら嵌めて下さい。美しい人、あなたに選ばれることを信じています」
解約・・・・・・か
いつか訪れる別れを
気にして
契約したままのボロアパートを
思い浮かべつつ
真人の触れた薬指に
そっと
唇を押し当てた
いいのだろうか
10才も年下で
才能だけでなく魅力もある
真人を
俺のような
オッサンが独占して
真人は俺の
最初で
最後の男であることは
間違いないと
言い切れる
誰に思いを寄せられても
真人との
思い出を胸に秘め
抱くことも
抱かれることも出来ない
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