第九章

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首を傾げながら 胸元の ポケットに忍ばせた指先が ・・・・・・・・・あ 硬く冷たい 円状の輪に触れた 「これ・・・・・・って」 俺の左手をとり 「俺の人生の残りで目にする景色は栄一と同じ眺めであればいいと願い、合い鍵を回収しました」 薬指を 親指で擦る真人の顔が 「あなたの愛を得られる男であり続ける努力は惜しみません。一人で涙を流させたりもしないと誓う」 涙で滲んで見えにくい 「栄一・・・・・・」 背中へと 回された腕は強く 頬の あたる胸は温かい 「指輪は、あのアパートを解約する覚悟を決めたら嵌めて下さい。美しい人、あなたに選ばれることを信じています」 解約・・・・・・か いつか訪れる別れを 気にして 契約したままのボロアパートを 思い浮かべつつ 真人の触れた薬指に そっと 唇を押し当てた いいのだろうか 10才も年下で 才能だけでなく魅力もある 真人を 俺のような オッサンが独占して 真人は俺の 最初で 最後の男であることは 間違いないと 言い切れる 誰に思いを寄せられても 真人との 思い出を胸に秘め 抱くことも 抱かれることも出来ない
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