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出会いの日
北風に吹かれるアイツを
見た俺と
寒さに震え
コートの襟もとを掻き合わす
俺を
目にしていたアイツ
『俺の人生の残りで目にする景色は栄一と同じ眺めであればいい』
俺も・・・・・・
真人の
隣で同じ景色を眺めていたい
そう、思う
「ただいま、ロン」
パタパタと
尻尾を振るロンと遊んで
よだれで
べたべたになった体を
浴室で
綺麗に洗い真人を待つ
昨日までと
何も変わらない日常が
とても贅沢で
輝いて見えるのは
薬指で光る
指輪の力かもしれない
そろそろだ
帰宅メールが届いて
20分経った
「ヤバい、ドキドキする」
指輪を目にした真人は
どんな反応を
見せてくれるのだろう
期待と不安で
落ち着かず
そわそわ動く手で
乱れていない髪を撫で
シルクの
シワのつかないパジャマを
整えつつ
あ・・・・・・
開いていく玄関を見つめた
「お帰り、真人」
ドアを開けた態勢で
動きを止め
薬指を飾る指輪を
声もなく
凝視していた真人の
止まっていた時間が
動きだす
《パタン》
静かに閉じた玄関ドアに
カチリ
鍵がかかる
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