第一章

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ウィスキーのロックを 氷の溶ける間もない勢いで 飲んでいた カウンター席から 「おい、桜田」 身を乗り出してきた 職場の上司 木山部長の 圧倒的な存在感と 威圧感に 呑まれそうになった俺の 狼狽など 気にかける素振りさえ見えず 「あの、 はい」 一瞬で 酔いが吹き飛びそうな 鋭い目を向けてきた 「好きなら諦めるんじゃねえ!」 ・・・・・・、部長 「女に食らいつけ! 二度と寂しい思いはさせねえと言って来い」 「は、はい。そうっすよね」 気迫のこもった声に 強く鋭い眼差しに 萎れていた心を奮い立たされた 「俺、もう一度真結に会ってきます」 22時35分 今から走れば間に合う 真結の 就寝時間前には着くだろう 《ガタン》 椅子から立ち上がり 「信じられない。部長がプライベートで助言してるわ」 驚いた口調の企画課の先輩 スマホ片手に 『ウフフフ』 社内の萌を追い求める 好奇心旺盛な女性 松井さんと 《カラン》 何杯めかの 水割りのグラスを揺らし 「どうせ木山くんのこと思い浮かべてるのよ」 気怠げに 官能的な笑みを浮かべた Y社の薔薇
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