266人が本棚に入れています
本棚に追加
「切り込んで聞くけど」
薄茶色の
柔らかそうな前髪を
細い指で
かき揚げた瞭ちゃんが
何を言うのか
そわそわして
気分が落ち着かない
食堂のテーブルの下で
足を組み
足先を軽く揺らした
「進展があったりしたのかな? 真人くんと」
ぶくぶくぶく
俺がカニだったら確実に
口から
泡を吹いてるだろう
目の前で
弁当のシューマイを
食べながら
俺を見つめる瞭ちゃんの
綺麗な瞳に
からかいの色はない
手の指を絡め合わせ
震えを
落ち着かせてから
口を開いた
「ど・・・・・・ っ て」
「どうして気付いたのかって?」
コクコク
首を縦に振る俺に
「貴文さんに恋してるからだよ。だから、恋をしてる人の気持ちがうっすらとだけど分かる
好きなんだろうなぁ、って」
微笑んだ瞭ちゃんの
笑顔は
とても綺麗で
愛情に満ち溢れていた
「・・・・・・ぅん」
好き
頷くだけで精一杯
綺麗でも
特別な格好よさもない
平凡なオッサンの
恥じらう姿を見て
『かわいい』
囁くのは
アイツしかいない
俯いて
燃えるように熱い顔を
両手で覆った
最初のコメントを投稿しよう!