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何とか通話を終え、ほっと一息ついた刑務官は窓の外を見て青ざめる。
これから保護責任者に引き渡す予定の少年の姿が、どこにも見えないのだ。
あわてて外へと飛び出したところで、塀の外にも人っ子ひとりいなかった。
必死に周辺を探した結果、見つけたのは木の根元に落ちたサングラスだけだ。
もしこの新米刑務官が電話対応に追われていなかったら、愛らしくも美しい兄妹は逃避行できなかったかもしれない。
すでに起きてしまった事に対し、もしあの時と考えるのは全く無意味な仮定に過ぎず、奇妙な間違い電話はかかるべくしてかかってきたのだが。
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