794人が本棚に入れています
本棚に追加
「ママはしばらく帰ってこない。でも、いつか帰ってくるよ?」
前みたいに泣かないでと、祈るような気持を込めて柚樹は伝える。
前にママが消えた時、来夢は火がついたように泣いた。
そしたら隣の部屋の、雪だるまみたいに太ったお兄さんが怒鳴り込んできて大変だったのだ。
「うん、わかった・・・・・・お兄ちゃんは?」
ちょっとうつむいたけど、今度は来夢も泣かずにこらえてくれる。
「お兄ちゃんは朝ゴハンを買いに行く、ぜったい帰ってくるからね」
来夢は薄茶色の瞳を潤ませ、柚樹のシャツの端っこを小さな手でぎゅうっと絞った。
でもがんばって泣かなかった。
最初のコメントを投稿しよう!