第3章

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「悪いね、無理させて」 「いや、承諾したのは俺だから」 シミュレーションルームに向かう途中の廊下。まさかランク1と会話する機会が生まれるとは思わなかった。貴重な体験である。あまり体験したくはなかったが。 「実は、私もあまりAMS適性が高いほうじゃないんだ」 「でもあんた、ランク1まで行ってるじゃないか」 「たまたまだよ。たまたまタイミングが良かっただけだ……すぐに世代交代になって、もっと適任者が現れるよ。例えば、あのオーメルグループのランク3。オッツダルヴァ。奴はすごいね。あんなに若いのに。あっという間に追い越されるかもしれない」 「あんた……それを望んでいるみたいだな」 「ああ。望んでいるさ。いつまでも私みたいな人間がカラードのトップにいるわけにもいかない……知っているだろうが、私は特例として他企業のパーツを使えるんだ。インテリオルのお偉いさんも渋々だろうがね」 「それだけ認められてるってことだろ」 「だといいんだけどね……私の我儘なんだよな。結局は」 「どういうことだよ」 「私も、企業の政治ごっこが嫌いなだけさ。世界は一つなんだから、喧嘩なんかしてる場合じゃないって、ずっと思ってる。ガキみたいだろ?」 彼女は、一人でもがき続けているんじゃないかと思った。自分ではどうすることもできない今の状況に必死で戦っているんだと思った。だから彼女は自分の機体に様々な企業のパーツを使うことで、いつか来るかもしれないその、「世界が一つになること」を夢に描き続けているのではないか。
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