第2章

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GA社なら『グレートウォール』。BFF社なら『スピリット・オブ・マザーウィル』。オーメルグループならアルゼブラ社の『カブラカン』。各企業が社命を賭けて作り上げた最強クラスのアームズフォートである。 「そいつらは俺たちでも苦労するだろうな。だが、仕事がきたらやるしかない」 コーヒーをすする。デニスは何やら俺の後ろ、ラウンジの入り口に目を向けていた。 「おい、ヘクト。あれ、見ろよ……」 デニスが声のトーンを落としながら言った。 俺も振り向いて入り口を見る。 「カレン・テイラーだ……なんだってカラードランク1がこんなところに……」 『カラード』と呼ばれる企業連管轄のリンクス管理機構。もちろんそれには俺たちも登録されているのだが、俺のランクは20。デニスは25。確か登録されているリンクスは30ちょっとだったから、俺たちはだいぶ下の方だ。とは言っても、俺たちのような独立傭兵があてにされるわけがないのだ。大抵は各企業に支援されている傭兵がランクの上位を独占する。言うなればコネである。 それでも、ランク10以内のリンクスは確かな実力があるだろう。彼らはリンクスの中でも化物の部類に入る。カレン・テイラー。彼女はそのトップだ。 なんでも、彼女はインテリオル社の支援傭兵でありながら他企業のパーツを使うことが許されているらしい。その話が本当ならば、それは今から数年前、まだカラードと呼ばれる管理機構がなかった頃の傭兵、ベルリオーズ以来の例外である。 「おい、こっちに来るぞ……」 いよいよ謎である。ランク1の企業戦士が俺たちのような独立傭兵に何の用であろうか? 俺たちが何か悪いことでもしたのであろうか? 「ヘクト・アーヴィングだね」 俺の名前を呼びやがった。名前を知ってもらえているとは光栄である。デニスは新聞で顔を隠しながら彼女と目が合わないようにしている。 「ああ、そうだけど……何か?」 慎重に返事をする。下手なことを言えばこの場で始末されるかもしれない。 「次の仕事で貴方と共同作戦をすることになったから、挨拶に来たんだよ」 「は?」 「いや、だから、次の仕事で共同作戦をね。することになったから。よろしく」
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