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「じゃ、あとは二人で話し合ってくれ」
「と、冬…」
「うるせえ。お前、俺のダチでいたいんだったら、いい加減そのだらしなさをどうにかしろ。最近、本気でお前のこと嫌いになりそうだ」
そう言った途端、伸びていたはずの小太郎が勢いよく立ち上がった。
俺の肩を掴んで、真剣な表情で俺の顔を覗き込んでくる。
「やだ!!」
「あ?」
何が「やだ」だ。
つーか、せっかく剥がしたのにまた振り出しかよ。
「離せ、鬱陶しい」
「やだ、冬夜、俺のこと嫌いにならないで!」
「だったら彼女と真面目に話し合え」
「彼女なんかじゃないってば!!」
「いい加減にしてっ!!!!」
俺と小太郎の言い争いを、女の叫び声が遮った。
「も、もういい、嘘だもん、もういいっ!!」
小太郎の形のいい眉が、不快そうに歪む。
「……嘘?」
低い声だった。女がビクンと震える。
顔が少し青ざめていた。
「嘘ついたの?」
「……」
「答えて」
「…そ、うだよ」
「………」
小太郎がはっきりと嫌悪の表情を浮かべる。
顔の作りが整っているだけに、迫力がある。
でもお前は、そんな顔ができる立場かよ。
「だって、小太郎君、一回Hしたら全然相手してくれなくなっちゃったじゃない。妊娠したって言ったら、少しはこっちを向いてくれるかなって思ったの……っ!」
「さいてー、馬鹿じゃないの」
吐き捨てるような小太郎の言葉に、女の大きな目から涙が溢れた。
少しして、ひっくひっくと小さくしゃくりあげる声が聞こえてくる。
俺は溜め息をついた。腕を振り上げる。
ゴッ!!
容赦なく小太郎を地面に沈めた。
女が目を見開いて固まっている。
「おい、アンタ」
ビクン!と体を震わせて女が一歩後ずさった。
怖がらせたいわけじゃないが、クソむかついているせいでどうしても声が刺々しくなる。
「コイツ、心底サイテーの男だから。やめとけ」
俺も今回ばかりは見損なった。
マジで見損なった。
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