ラウンド1

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「じゃ、あとは二人で話し合ってくれ」 「と、冬…」 「うるせえ。お前、俺のダチでいたいんだったら、いい加減そのだらしなさをどうにかしろ。最近、本気でお前のこと嫌いになりそうだ」 そう言った途端、伸びていたはずの小太郎が勢いよく立ち上がった。 俺の肩を掴んで、真剣な表情で俺の顔を覗き込んでくる。 「やだ!!」 「あ?」 何が「やだ」だ。 つーか、せっかく剥がしたのにまた振り出しかよ。 「離せ、鬱陶しい」 「やだ、冬夜、俺のこと嫌いにならないで!」 「だったら彼女と真面目に話し合え」 「彼女なんかじゃないってば!!」 「いい加減にしてっ!!!!」 俺と小太郎の言い争いを、女の叫び声が遮った。 「も、もういい、嘘だもん、もういいっ!!」 小太郎の形のいい眉が、不快そうに歪む。 「……嘘?」 低い声だった。女がビクンと震える。 顔が少し青ざめていた。 「嘘ついたの?」 「……」 「答えて」 「…そ、うだよ」 「………」 小太郎がはっきりと嫌悪の表情を浮かべる。 顔の作りが整っているだけに、迫力がある。 でもお前は、そんな顔ができる立場かよ。 「だって、小太郎君、一回Hしたら全然相手してくれなくなっちゃったじゃない。妊娠したって言ったら、少しはこっちを向いてくれるかなって思ったの……っ!」 「さいてー、馬鹿じゃないの」 吐き捨てるような小太郎の言葉に、女の大きな目から涙が溢れた。 少しして、ひっくひっくと小さくしゃくりあげる声が聞こえてくる。 俺は溜め息をついた。腕を振り上げる。 ゴッ!! 容赦なく小太郎を地面に沈めた。 女が目を見開いて固まっている。 「おい、アンタ」 ビクン!と体を震わせて女が一歩後ずさった。 怖がらせたいわけじゃないが、クソむかついているせいでどうしても声が刺々しくなる。 「コイツ、心底サイテーの男だから。やめとけ」 俺も今回ばかりは見損なった。 マジで見損なった。
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