安っぽい南国風居酒屋

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安っぽい南国風居酒屋

のんびりした沖縄民謡が流れる南国ムードの店内は、すでに大勢のお客さんで賑わっていた。 埃を被ったハイビスカスの造花が飾られた、板間の広い座敷に通され、とりあえず掘りごたつの長テーブルを挟んで奥が女子、手前が男子ってかんじで、向かい合って座る。 「ミーナ、何飲むぅ?」 「うーん、やっぱりとりあえずビール?」 「ワタシはビールはちょっとなぁ・・・」 「あー超のど乾いてっから、やっぱオレ、一杯目はオリオンの生だな」 「俺もオリオン生」 となり同士肩を寄せ、メニューを見るフリをしながら向かいに座った相手をチラ見チェックは欠かさない。 そこへお店のお兄さんが、ニコニコと笑みを浮かべてオーダーを取りに来た。 「俺、オリオンの生」  「ボクも」 「オレ、大ジョッキでね」 「ワタシ、シークァーサーサワー」 「あ、わたしわぁ、島みかんサワー」 「私やっぱりオリオンにしよ。 とりあえずグラスでいいや」 「ワタシ、パイナップルサワー」 「あたしウコンサワー」  「おれはいきなり泡盛いっちゃおっかな?ロックで!」 オーダーはやたらとバラバラ。 そしてお店のお兄さんが急いで伝票に書き込むそばから、あっちこっちで食べ物の名前が飛び交う。 「ゴーヤーチップス」    「ミミガーね」 「私、海ぶどう食べたーい」 「あ、今のそれぞれ3皿ずつ」 「ラフテー、3皿」 「すくがらすって何・・・?」 「いやラフテーは4皿くらい食うべ」 「塩漬けの小魚で島豆腐に乗ってます」 「ラフテーって一皿何個?」 「ゴーヤーチャンプルーとフーチャンプルー」  「島らっきょ」  「と、ソーメンチャンプルーもいってみっか?」 「島ラッキョウは売り切れました」 「あ、フツウに鳥の唐揚げ食べたいな」 「はい、ラフテーは一皿3個です」 「ちっちゃくない?おれのコブシくらいある??」 「んーまぁ、3センチ角くらいっすかねぇ、、、」 「じゃ、やっぱ全部4皿にするか」 「んな、美味しかったらまた追加すればいいじゃねーか」 「そーだよ、9人なんだから」 ようやく長いまとまりのないオーダーが終わった。 こいつら男子は、ふだん飲み屋で働いてる腹いせなんだろうか。 特にあたしの斜め前に座った男は、ラフテーラフテーって、うるさいしくどい。 お店のお兄さんは、何度も伝票を確認しながら去って行った。
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