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サーファー
「そこ、松野の集まり?」
あたしが返事もせずにポカンとその人の顔を見上げていると、その人は座敷のふすまに手をかけて、大きく中を覗き込んだ。
「あっ!タケルさん!!」
ユウキ君の声に、絡み合ってラフテー男を押さえ込んでいた男子達、そしてそれを見てゲラゲラ笑っていた女子達が、いっせいに座敷の入口のほうを見た。
突然9人の視線を受けて、その人は「おっと」という感じに体を後ろにのけぞらせると、真っ黒に日焼けした顔を緩めて、大きく 二ーーーッと、白い歯を見せて笑った。
緑の色あせたヨレヨレのTシャツに、やはり色あせたヒザでカットされたデニムのパンツ。
そこから伸びた手も足も、とにかく黒い。
髪の毛はクセ毛なのかパーマなのか、かなりきつくカールしていて、しかも無造作に長い。
無精ヒゲがところどころ伸びた黒い顔の中で、何より印象的なのはその「目」だった。
一重まぶたなのに大きく、黒目がちなつり目で、何と表現したらいいのか……
簡単に言ってしまえば、夜に見る猫みたいな目で……
「遅くなってすまん」
その人がひとこと言って座敷に上がった時、後ろからお店のお兄さんが忙しげにやってきて、
「大変お待たせしましたー!!」
と言いながら、オーダーした大量の料理を一気に運んできた。
なのでその人は、お兄さんに急かされるように一番近い空いている席、
つまり、あたしの目の前の席に座った。
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