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「君、名前なんていうの?」
突然タケルさんに訊ねられ、あたしは答えようとして口を開けてはみたものの、あまりにもキンチョ?し過ぎて、そのまま無様にフリーズしてしまった!
まるで猫の目の前に飛び出してしまったネズミのよう……( アヒルだけど!)
「あーーーー!!そういえばさぁ、アヒルの自己紹介してなくない??」
その時、隣に座っていたゆりえちゃんが、すっとんきょうな声を上げた。
そしてみんながいっせいに、初めてあたしの事を見た。
「はっ!そういえばボク達、聞いてないよね!?」
今更のようにその事に気づいて、慌てる男子達。
「卓くんが急に変な話、言いだすからだよー!」
「アヒルちゃん、かわいそぉー」
「そうだ!卓のせいで自己紹介が脱線したんだった!」
「え?何??おれのせいなわけ!?え!?そうなの?え!?えーー!?」
ラフテー男は、また自分に話題が戻ったもんで、目をギョロギョロさせながら嬉しそうにはしゃぐ。
「アヒルちゃんていうんだ?カワイイあだ名だね」
タケルさんが猫目をゆるめて、優しく笑いながら言った。
カワイイという言葉に体が勝手に反応して、急に心臓の鼓動が跳ね上がる。
落ち着け、バカ、あたし!カワイイってあたしじゃなくて、あだ名が、ですから!!
「あ、あ、あ、はい、アビルヨシコと申します……アビルなのでアヒルです。つ、次、ゆりえちゃん、はい!」
あと3秒後には、間違いなくあたしの顔はみっともないほど真っ赤になるだろう。
容易に想像がついたので、あたしは急いで隣のゆりえちゃんに、タケルさんの視線を譲った。
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