1人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ?はーい♪佐藤友里恵と申しまーす♪友里恵なのでゆりえでーす!次、ミーナちゃん、はい☆」
ゆりえちゃんはおどけた調子で、あたしの口真似をすると、ポンっ!とミーナちゃんの肩を叩いた。するとそれに続いてミーナちゃんも、他のみんなも、あたしをからかうように真似をした。
「あ、はーい。上田美奈代でーす!美奈代なのでミーナでーす♪次、さったん、はい」
「あ、はーい!古川サチでぇーす。サチなのでぇ、さったんでーすぅー♪
次ゎレナたん、はい♪♪」
「はーい、前田レナでーす!次、ユウキ君飛ばして隼人君、はい!!」
そして最後にレナちゃんが右手を挙げて、隼人君にハイタッチを求める。
隼人君は慌てながらも右手を上げて、レナちゃんとパチンッ!と手のひらを合わせた。
「隼人でーす」
「シュンでーす」
「卓也でーす」
「ウーロン茶でーす」
まるで合わせたようなグッドタイミングで、タケルさんの飲み物が運ばれてきたので、みんながまたどっと笑った。
この時あたしは、この合コンに来て初めてみんなと一緒に笑うことができた。
みんなが、たどたどしいあたしの自己紹介に合わせてくれたのも嬉しかった。
なんだかようやく、仲間にしてもらえたような気がしたのだ。あたしはずっと、初対面のミーナちゃんやさったんや、男子達だけでなく、レナちゃんや、ゆりえちゃんにさえ、自分で壁を作って冷やかに観察し、打ち解けようとしなかった。
そんなあたしの事なんて、誰も気に掛けてくれなくて当然だと思う。
ブスの壁を、いちいち越えてやって来る物好きはいない。
でも、ブスにだって存在価値はあるはずだ。
聞き上手なブス。
気配り上手なブス。
引き立て上手なブス。
なんだって良い。
とにかくあたしは今、このタケルさんて人に『感じの悪い暗いブス』と思われたくなかった。
そしてその時、あたしの頭にとっさに閃いたのは……
『居ても良いブス』
どういう定義かよくわからないけど、とにかくあたしは一人大きくうなずくと、目の前のウコンサワーのグラスを握りしめ、一気に飲み干した。
酒の力も借りれば、このくらいはできるはず!
最初のコメントを投稿しよう!