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「〈うそじゃない〉」
信じてもらえなかったことに少しムッとする。
「なんだ…捨てられたのか?…いや、でも……この歳まで生き延びられてるのは何故なんだ…?」
ぶつぶつと呟くラクス。
長すぎてあまり聞き取れなかったが、なんで俺がここまで生きているのか気になっている、ということは分かった。
「〈自分はすてられて〉」
「〈人間じゃない者にひろわれた〉」
メモ帳に2枚続けて書き、ラクスに渡す。
「人間じゃない者っていうのは…なんだ?」
「〈それは〉」
そこまで書いたところでメモをクシャクシャに丸める。
そして新しい紙に
「〈いわない〉」
と書く。
ラクスが怒ったのが雰囲気でわかった。
頭で今書いたことを反芻しても、何もおかしいところはない…はずだ。
「〈自分はかぞくが大切
いったらキケンかもしれない
いわない〉」
メモ帳に、途切れ途切れに言いたいことを並べて書く。
それを読んだラクスが、少し表情を和らげる。
「大切な家族を守るために、誰に育ててもらったのかは言わない、ってことか?」
頷く。
「チッ…なめられてんのかと思った…」
……?
「〈もういっかい〉」
「…あ?」
「〈いって〉」
「……なめられてんのかと」
そこでペンを走らせる。
そこに書かれたそれは、
「〈なめられてんのかと、イミわからない〉」
「っはぁ~……」
大きなため息とともに、ラクスは自分の少ない一般教養を頭から引っ張り出した。
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