平穏

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蒼い空、真っ白な雲の上に、巨大な島が浮遊していた。 これは浮遊島。 伝説の、竜(ドラゴン)が住むと言われる島。 そんな島に、1人の青年がいた。 彼はこの島で唯一の人間。 そして、竜達にただ一人愛されるヒト。 彼の名前はノア。 かつて人間に捨てられ、竜に拾われた。 彼もまた、人間に恐れられる竜達を心から愛していた。 ___________________________________ 「フリュー!!」 勢いよく城に飛び込んだノア。そこには真っ黒な鱗の立派なドラゴンが眠っていた。 『……なんだ、ノア…』 地の底から響くような、唸り声。ただの人間には唸り声にしか聞こえないその声も、幼い頃からいるノアにはその意味が分かる。 『なんだじゃない!!あの子竜達をどうにかしてくれ!俺が疲労で死ぬ!』 同じくドラゴンの言葉で返す。今日は朝から子竜達に起こされ、たくさん遊ばされていたのだ。 『……あー…元気でいいじゃないか。…遊ばせてやれ…』 そうしてフリューと呼ばれた黒竜は、くぁっと欠伸を漏らす。 ……その口から、黒い炎が少し漏れ出たのは気にせずに。 『ぅぅ~…みんなそう言うぅぅ……』 ドラゴンの言葉で漏れる弱音。 それは、ノアにより身近なのはドラゴンだということを示していた。 と、そこに大きな羽ばたく音が響く。嫌な予感を覚え、後ろを振り向くと 『ふりゅ~…って、ノア!見つけた!』 『あそぼあそぼー!!』 『のあ~!』 ______子竜達が集まっていた。 『くっ……見つかったっ!』 恐らく、途中からいなくなってしまったノアの居場所をフリューに聞きにきたのだろう。
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