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「〈どらごん〉」
ラクスの羽織りの裾を小さく引っ張りメモを見せる。
「あぁ?悪いが今は後に…」
「〈じぶんがやる〉」
殴り書きのそれでも彼は読めたのだろう。
呆れたような顔をされる。
「あのなぁ…ギルドマスターの俺だってドラゴンは倒せない。1人じゃ無理なんだ。それをお前が倒すって?馬鹿じゃねぇの?」
「〈できる〉」
殴り書きしたそれをラクスに押し付け、女性の手の紙を奪い取るようにして見る。
「あ、ちょっと!」
北の森
ドラゴン3体
報酬:1052万RIN
『なんで報酬なんかっ…』
その依頼書を読む限り、ドラゴンは何もしていない。
なのに、人間が襲われるかもしれないという理由だけで討伐依頼が出ている。
報酬なんか提示したら、強い者はだれだってやるさ。
グシャ…と紙が小さな音を立てる。
どうやら、気づかないうちに紙を握りしめていたらしい。
「……お前今…声…」
「〈ラクス〉」
「〈案内 たのむ〉」
「はぁ!?お前と俺で倒すのか!?」
「〈ちがう ラクスはなにもしない〉」
「〈案内だけ たのむ〉」
ラクスが何か言う前に、メモに書き見せる。
それがよっぽど自身があるように見えたのか、ラクスは渋々ながらも頷いてくれた。
「危険だと思ったら逃げる。俺もお前もだ。分かったな?」
頷く。
それを聞いた女性が何か言っていたが、ラクスはついてこい、と俺に声を掛けて部屋を出た。
ラクスってギルドで一番偉い人だったんだな…
今日初めて知ったその事実をぼんやりと考えつつ、ラクスの後を追った。
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