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________北の森
そこは、空高く伸びる木に日光が遮られた、薄暗い森だった。
ドラゴンの島には居ない、毒を持つ体長約20cmの百足なる蟲が生息している。(ラクスがビビりながら教えてくれた)
しかし百足も、本来森にいるはずの動物達の姿も見えない。
何故……?
「ノア、そろそろドラゴンが見えてきてもいい辺りまで来た。お前の聴力なら何か聞こえるんじゃないか?」
「………」
ラクスのその言葉に、フルフルと首を横に振った。
聞こえるならもう反応している。
風で揺れる木々のざわめきしか聞こえないこの森は、暗さと相まって更に不気味に感じた。
「チッ……」
「…〈方法はある〉」
苛立つラクスにメモ用紙を見せる。
ラクスから言葉を教わっても、未だ話すことは出来ていない。
「どんな?」
「……〈はなす〉」
「……………誰と?」
話の流れからしてその対象は1つしか無いのだが、ラクスは信じられないというように聞き返してくる。
そりゃあ
「……〈ドラゴンと〉」
「…もしかして、お前を育てたのは…」
「〈いわないで〉」
ラクスにそれだけ書いたメモ用紙を押し付けて、ジェスチャーで耳を塞ぐよう指示する。
ラクスはまだ驚いた顔をしていたが、俺の指示に耳を抑えて少し離れた。
すぅっと大きく息を吸い込み
『----------------------------------っ!!』
音とともに吐き出す。
それは木の葉を、大気を、地面を揺らし、大きく響いていく。
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