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________遠くで、何か重いものが動く音がした。
『いたっ…!』
嬉しさで思わず言葉が零れる。
「っおい。なんだあれ…?」
耳を押さえたままやってくるラクス。
その問いを無視して、音が聞こえた方向を指で指して教える。
「…なにか聞こえたのか?」
頷きでそれに答える。
ラクスの腕を引き、早く早くと促す。
ラクスは嫌そうな顔をしつつも、少し歩みを早めてくれた。
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「いた……竜の家族、か…?」
竜が目視で確認できる近さまで近づいた。俺とラクスは茂みに隠れて様子をうかがっている。
「〈いってくる〉」
「はぁ!?」
思わず大きな声を出してしまったラクスは慌てて声を潜め、ドラゴンの様子を伺う。
あー、ばれたな。
「〈場所しられた〉」
「〈はなれたところに移動して〉」
ラクスが頷いたのを確認して、茂みから出て背中に力を集める。
浮遊島と変わりない、あの黒い翼が出現。
それを動かし竜の家族の元へと一直線に飛んで行った。
途中でなぎ倒された木や、抉れた地面から見るに、竜達はこの森から出ようと彷徨っているようだ。
『止まって!』
ほんの数秒で詰めた数百メートルの距離。彼らに叫ぶようにして声をかける。
子供を背に庇うようにして立っているのがきっと母親なのだろう。
驚きながらもこちらに振り向く。
『……誰だ』
『浮遊島からの使いです。あなた達を浮遊島へ導きます。』
『浮遊島…!?何故人間が…?』
信じられなさそうな母親の竜。子供達は陰から様子を興味津々で見ている。
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