平穏

5/11
前へ
/31ページ
次へ
『鬼ごっこしたい?』 『したい!』 『のあがおに!』 『のああそぼ!』 ノアが聞くと、嬉しそうに返す子竜達。 ノアは食べ終わっていない木の実を、フリューからもらった鞄の中に入れる。 そして鞄から取り出した瓶に酒を入れ、それも鞄にしまった。 どこで手に入れたのかは知らないが、魔法がかかっているのか何でも入ってしまうので〈万鞄-よろずかばん-〉とよんでいる。 人の世界では昔、様々なものの総称が万だったからだ。 『っし!遊ぶか!』 わぁい!とよろこぶ子竜達は上空を旋回している。 ノアは目を瞑り、背中に力を集めるように集中し……… 『のあかっこい~!』 『すごい!』 目を開けたときには、背中に黒い翼が生えていた。フリューに教わった魔法だ。 数回上下に動かしただけで、大きな音と風が巻き上がる。 そしてゆっくりと浮上した。 『よし、いくぞ!』 『『『きゃー!!』』』 ノアが声をかけると嬉しそうな声と共に、もの凄いスピードで飛んでいく子竜達。それをノアは追いかける。 まずはロンから。 氷竜のロンは、後ろを飛ぶと凍りそうなほど寒い。そして、ドラゴンの魔法で空気中の水蒸気を固めて飛ばしたり、氷のブレスを吐いたりする。 『ローン!まずはお前からだ!』 『のあ、はやいよー!』 グングンスピードを上げ、ロンに迫る。近づくほどに凍えるほど寒いが、フリューから教わった魔法でそれを無効にする。 空気中の氷の塊や、ブレスをうまく避けながらロンの背中に飛び乗ろうとする。 が、朝もやっただけに、それはうまく避けられて右側から氷の塊をぶつけられる。 その衝撃にフラついたところに、氷のブレスがやってくる。それを旋回するように避け、ロンの右下を狙って魔法を展開する。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加