平穏

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フリューの顔が笑っているような気がしてようやく気付いた。 『フリュー!』 『…それなりに一緒にいるんだから、なんとなくわかるぞ』 カマをかけられた。 フリューの声が少し震えているから、笑っているのだろう。 『…もう……恥ずかしいだろ…』 赤い顔をしているノアに、フリューはクククと笑う。 ノアがジロリとフリューを睨んだところで、フリューが切り出した。 『…なぁ、ノア』 『……なんだよ』 『人間の学校に、行く気はないか?』 それは衝撃だった。 考えたこともなかったそれに、ぽかんとしてしまう。 『人間の、学校…?なんで?』 『いくら竜達の進んだ知識があっても、何かあったときに人間の世界に適応できない』 『え…でも、俺…ここに居たい…ずっと』 もういらない?また捨てられるの? 悪い考えだけが頭の中をぐるぐる回る。 『違う、そうじゃない。お前は家族だ。』 まるで心を読んだかのようなその言葉に、じっとフリューを見つめ返す。 『…私の息子に頼みたいことがあるんだ。お前にしかできないことだ。』 〈私の息子〉 そこ言葉になんだかよくわからない気持ちがぐるぐると回って、ノアは涙を流した。 そして 「いいよ」 『…?』 『俺、行くよ。』 そんな言葉が、自然と溢れていた。 『…いいのか?』 『フリューがいったんじゃん。何を今更』 ノアは笑いながら言う。 「(大切な者に大切にされているのなら)」 『それで?フリューの頼みたいことってなに?』 『…人間界ではこの島に来れず、彷徨っている竜達がいる。危害を加えていないのに人間に殺されたりもするらしい…』 …何もしていないのに…?
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