第2章

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 昨日、瑠璃子から願った事を聞き出している時も、この話で二人とも笑いが止まらなくなったのだ。清音の母親は、瑠璃子が帰る時、なんだか二人ともすごく楽しそうだったわね。と嬉しそうに言っていたくらいだ。  正人は、二人の幼馴染で、今は同じクラス、瑠璃子の隣の席だった。家も近く、小学校の中学年くらいまでは結構仲良くしていた。小学校の高学年になると男子と女子、なんとなく自然と別れていく流れで疎遠にはなっていたが、まぁ普通に知り合いといった感じだった。 「だって、あの成績優秀な正人が、るぅの点数になってるんでしょ?フッ、そりゃもう、あの優等生の正人君がどんなにへこんだ事か、アハハッ、想像するだけでおかしい」  正人は見た目はいたって普通だが、みんなから『正しい人と書いて正人君』と茶化されるような真面目な優等生。テストも準備万端で臨むタイプだ。 「けど、点数交換を願うなんて、るぅ、よく思いついたよね。アハハッ」 「だってさ、正人さ、あいつ、テスト始まった途端に隣でカリカリカリカリし始めるもんだから、つい」瑠璃子はそう言うと、ヒヒッと笑った。 「あれ、多分相当悪かったと思う。テスト返された時の正人の様子……顔、血の気引いてたし」瑠璃子は、その時の正人の顔を思い出したのかのようにウクククと笑った。 「静かにしなさいっ」二人は反射的に声のした方を向いた。声をあげて笑いあっている二人の傍に、いつの間にか司書の年輩の女の先生が立っていた。 「ハハッ、す、すみません。ククッ」清音が、笑いつつもなんとか謝った。 「大きな声は出さないように」 「はい」清音はにやけた顔を隠すように下を向いて返事した。瑠璃子は下を向いて必死に笑いをこらえている。  先生は、注意はしたからねと言わんばかりの様子でカウンターの方へ戻って行った。 「あぁ、笑いすぎでお腹痛い。ウヒッ」瑠璃子がつとめて小さな声で、お腹を押さえながら言った。  清音もお腹を押さえて、笑いを止めようとしながらうなずいた。
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