第2章

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 週も半ばを過ぎていた。石の件があり、清音と瑠璃子は学校の行き帰りや、教室でも一緒に居る事が多くなっていた。が、具体的な進展は何もなかった。 「何かさぁ、最近、正人がちょろちょろしてるってか、良く見る気がするんだけど、気のせいかな?」瑠璃子は月曜日に図書室で姿を見たのを発端に、今週ずっと、教室外で正人を見かける率が高いと感じていた。最初は気にもしなかったが、あまりに良く見るので、やっぱり図書室で例の点数交換の話を聞かれてたんじゃ?と少しだけ気になりだしていた。 「……気のせいじゃないと思う」清音はちょっと不機嫌そうに言った。  瑠璃子は不思議そうに清音を見た。 「今に始まった事じゃないから、気にしなくて良いよ」清音は口を尖らせた。 「は?」瑠璃子には何の話か見当がつかなかった。 「なんかね、多分、私の事ライバル視してるっぽい。塾も同じ所来たし、私が塾の時間増やしたら同じように増やすし。テスト何点だった?とかも聞いてくる」清音はうんざりした様子で小さく溜め息をついた。 「確かに成績は似たり寄ったりだから、ライバル視されるのもわからないでも無いけどさ…」清音はうっとうしそうな顔をした。 「へ?」あ、点数交換は関係なかったって事か。だったら良いやー。 「あ、そう言えば、あの時は点数聞いてこなかったな」清音はプッとふきだした。『あの時』が点数入れ替えた時の事なのは、瑠璃子にもすぐにピンときた。瑠璃子もニヤッとした。 「ああいうの、正直、ちょっと、うっとうしい」清音はまたうんざりした様子になった。 「へー」 「あ、私は別になんとも思ってないんだからね。成績なんて上でも下でもどうでも良い。ライバル視なんてくだらない。」清音はあわてた風に念押しした。 「ふーん」瑠璃子は適当な相槌を続けた。瑠璃子には、誰が誰をライバル視していよいうがどうでも良い話だった。正人がちょろちょろしてるのが、点数交換の話を聞いたわけじゃないとわかれば、それでもうどうでも良かった。  テストの返却があった授業の後、正人が清音の席までやってきた。「清音、何点だった?」 「92」清音は正人を一瞥して、またかと思いつつぶっきらぼうに答えた。 「ぉ。94点だった」正人は嬉しそうに言った。  あ、そ。そんなのどうでも良い。  と清音は心の中で呟いた。  いつもなら、ここで会話はプッツリと終わって正人は戻っていくのだが……
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