第2章

7/11
前へ
/61ページ
次へ
「正人、こないだの理科のテスト、何点だった?」清音は急に思いついて尋ねた。  途端に、嬉しそうだった正人の顔が明らかにこわばった。 「あ、あれは……途中から解答欄がずれてたんだ」正人は点数を言わずに言い訳した。確かに解答欄がずれていたせいで点が悪かったのは事実だった。 「へー、じゃあ、すっごい悪かったんだ?」清音はちょっと意地悪く聞いた。 「……まぁ」正人は力なくそう呟くと、とぼとぼと自分の席へ戻って行った。  清音は戻っていく正人をひややかな目で見送った。 「るぅ、ちょっと待て」  土曜の帰りのホームルームの後、瑠璃子を呼び止めたのは、教師2年目の若い男性教員、熱血体育教師の本間(ほんま)先生だった。体育の授業では大抵ランニング姿で、なんだか体操選手のようで、実際、筋肉質でもあったので、誰が言い出したのか生徒の間では、『本マッチョ』と呼ばれていた。  みんなが席を立ちバラバラと帰っていく中、カバンを持って清音の席に向かっていた瑠璃子は、立ち止まって先生の方を振り返った。清音も自分の席から先生に目をやった。  先生はすぐに瑠璃子の所までやってきた。 「るぅ、おまえ、最近どうした?部活は?いつ戻って来るんだ?戻って来るんだろ?」先生は心配そうな様子で瑠璃子に声をかけた。本間先生は、このクラスの副担任であり、バレー部の顧問でもあった。 「戻りたいよ!けど…戻れないんだっての」最後はボソボソとつぶやいた。 「あ?何言ってんだ?」先生は少し怪訝な顔つきをした。  瑠璃子は暗い顔でうつむき加減になっていた。 「おい、どうした?らしくないなぁ?悩みがあるなら聞くぞ?」先生は瑠璃子の肩をポンッと叩き、熱い眼差しを向け、熱い口調で語りかけた。  瑠璃子は、チラッと先生を見て、清音に目をやった。  清音は瑠璃子と目があって、口を開いた。「言ってみれば?」 「えっ」瑠璃子は清音のその言葉にことの他驚いた様子だ。 「この一週間、考えてはいるけど、良い方法、思いつかない。聞くって言ってくれてるんだし、ダメ元で言ってみても良いかもしれない」確かに清音はちゃんと瑠璃子の石の件を考えていたし、何もしていない訳ではなかった。先に進めないなら、と、最初から考え直してもいた。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加