第2章

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「るぅ、疲れてるんじゃないか?ちゃんと寝てるか?おまえが戻ってきたらバレー部、きっと強くなるぞ、みんな待ってるんだからな」そう、なだめるように言う先生の様子には、腫れ物に触るような雰囲気が見てとれた。  瑠璃子は不満顔で先生を見た。  清音は無言でノートをカバンに入れた。「帰ろ、るぅ」清音は瑠璃子を促して席を立った。  結局、先生は、二人でからかってると、そう判断したんだ。きっと本マッチョだけじゃない、そもそも大人を頼ろうとしたのが間違いだった。やっぱりこんなの信じてくれっこない。  清音はもう何を言っても時間の無駄だと見切りをつけた。「先生、さようなら」清音はそっけなく挨拶だけして教室を出た。瑠璃子は先生を見る事もせず唇をかみしめたまま清音に続いた。  本間先生は何も言えずにただ2人の後ろ姿を見送った。 「くそっ、何なんだよ、あの本マッチョ」瑠璃子は怒っていた。学校の校舎をでるまでは無言で怒りをため込んでいるかのような雰囲気だったが、校舎を出て歩き出すと突然怒りを吐き出し始めた。 「んー、まぁ、ダメ元だったし」清音はもともと期待していなかった上、ふざけていると思われる事も十分あり得ると予測していた分、あきらめも早かった。  が、瑠璃子の方はそうはいかないようで、怒り狂いだした。 「ちょっと良い先生だと思ってたのにさ、最低だ!」  ああ、良い先生だと思ってたんだ。だったらその分怒りも倍増するかもなぁ……相当怒ってるっぽいし…ちょっと放っておこう。 「あたしが頭おかしいってのかっ!大体あいつが心配してんのは、あたしじゃなくて、バレー部の事じゃないか」  うん。確かにそうとも言えそう。  清音は心の中で同意した。 「アタック決まってたのは石のせいだっての!」アタックの件は瑠璃子にとって一番カンにさわる部分であるらしく、自分で言いながら、さっきの話を思い出し、更に怒りが増してしまったようだった。 「クソッ!」瑠璃子は険しい顔つきで足元に転がっていた石を思いっきり蹴とばした。 「クソッ!クソッ!クソッ!本マッチョ、ムカつくっ!あんなヤツ、居なくなっちまえ!」  そう言った途端、さっきからわめき散らしていた瑠璃子が左手を見たまま時が止まったように固まった。  清音も立ち止まり、不審そうに瑠璃子を見た。瑠璃子は血の気が引いたような顔を清音に向けた。
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