第1章

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 「まぁ、瑠璃子(るりこ)ちゃん?いらっしゃい。久しぶりね。小学校の時以来じゃない?背、伸びたのねー。清音(さやね)より頭一つ分くらい大きいんじゃない?」  日曜日の午後、自分の部屋でベットに寝転んで雑誌をみていた清音に、階下から母親の嬉しそうな大きな通る声が聞こえて来た。  瑠璃子ちゃん?って、るぅ?るぅが来たの?なんで?  清音(さやね)は雑誌を手にしたまま頭をひねった。 「何か運動してるの?」「まぁ、そうなの、バレー部。」「アタッカー?背が高いもんねぇ。活発で良いわねー。清音とは大違いね。」  瑠璃子と話をしているらしいが、母親の声だけが聞こえてくる。 「清音は学校面白くないとか言っててね、瑠璃子ちゃんみたいに、ちゃんと部活でもすれば良いのにねぇ」  だって学校大して面白くないし。成績さえ良ければ文句ないくせに、こーゆー事言うんだから、むかつく。  清音は心の中で悪態をついた。  清音と瑠璃子は中学二年生。家が近くて、小学校までは学校の行き帰りも一緒で良く遊んだりもしたが、中学へ入ると喧嘩したわけでもないが、タイプが違うのもあって、自然と離れていった。今は同じクラスだが、とりわけ仲が良い事もなく、ただのクラスメートという感じだった。 「清音?居るわよ。どうぞあがって。清音?!瑠璃子ちゃん来てるわよー!」  大声出さなくても充分聞こえてるっての。  と、清音は心の中で悪態をつきながら「はーい」とそれなりの返事をし、雑誌を脇に置いてベットから体を起こした。  るぅが私の家までわざわざ?毎日学校で顔合わせてるのに。明日も学校で会うに違いないのに。急ぎの用事?なんだろう?全く見当がつかないけど。  瑠璃子は清音の部屋に入ると、全く瑠璃子らしくない神妙な顔つきで、手に持っていた袋を差し出した。「これ、あげる」  清音は袋を受取り、中を見て嬉しそうな声をあげた。「招福堂(しょうふくどう)のプリンじゃない!久しぶりだー。貰って良いの?」  招福堂のプリンは、この界隈ではちょっと有名な素朴な味が魅力の手作りプリン。一日数量限定で少し手に入り難いのもあって、この辺りでは、手土産にするとほぼ間違いなく喜ばれる品だ。清音も瑠璃子も小さい頃から大好物だった。 「うん。食べて。さーや、それ好きだろ」『さーや』は小さい頃の清音の愛称で、瑠璃子は未だに清音の事をそう呼んでいる。
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