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「るぅと清音が何であんなわけのわかならい事言い出したのか…ずっと考えてた。お前たちに何かしたんだろうかとか。。けど、見当もつかないし……ほんと言うとな、教師なんて向いてないんじゃないかって前からずっと悩んでた。今の時代、熱血教師なんて無理があるのかもなぁ…って。他の先生にも生徒はさん付けで呼びなさいって注意されるし、こないだは、親からも呼び捨てるなって電話がかかってきたし」
いつも明るく元気が売りの本間先生は珍しく神妙な雰囲気になっていた。
「生徒も半数はうっとうしそうに白い眼で見てるだろ?…陰で本マッチョって呼ばれてバカにされてる事も知ってる」
本マッチョは別にバカにしてる訳じゃないよね?と、清音は思い、瑠璃子と正人と軽く目を合わせた。2人とも同じ様に思っている風だ。が、誰も何も言わなかった。
「実を言うと、清音のその冷たい目が一番痛い」先生は清音をチラッと見た。
清音は名指しされてギクリとした。冷たい目と言われ少なからず傷ついたが、表情一つ変えなかった。と言うか、変えられなかった。
「先生、気にしなくて良いよ。さーやは変わってるからさ」フォローのつもりなんだろう、瑠璃子がひきつった愛想笑いをしながら言った。
「いや、その清音が見舞いに来てくれたなんて、本当にもう嬉しくて…」そう言って、うつむいた先生の目尻に何かが光っている。
清音はどう反応すれば良いのかわからなかった。何か知らないけど、先生は自分が見舞いに来た事で感動して泣いているらしい。と言う事はわかった。が、急に笑顔を作るような器用さは持ち合わせていないし、結局いつもの対先生用の冷めた表情のままだった。
「オレは間違ってなかった。うん、間違ってなかった」本間先生は自分に言い聞かせるようにそうつぶやきながら、手で涙を拭うと、勢いよく顔を上げた。「ありがとうな!清音。るぅも正人も」先生は元気な声でそう言うと、手の届く場所に座っていた瑠璃子と正人の肩を強く叩いた。
「うわっ」正人はその勢いであやうく椅子から落ちそうになり、声をあげた。
一人で感極まってまた涙を拭っている先生を前に、3人ともチラチラと目を交わした。
「先生、何があったんですか?入院なんて」しばらくして、清音が話を振った。
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