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「いや、何も無いけどな、昨日突然なっちまった。気胸っつってな。肺に穴があいて空気が漏れる病気だ。ちょっと空気吸いにくいってだけで元気なんだけどな、もう一個の肺まで穴開いたらまずいから、肺がもとに戻るまで入院しとかなくちゃならないんだよ」
という事は、るぅの願った『居なくなれ』は、『学校から居なくなれ』で叶ったって事かな。それも『ずっと』じゃなく、『一時的に』で。
「なんだかなぁ、ここの所ついてない。色々へこんでたからかなぁ。土曜の夜には信号無視の車に轢かれかけたし。間一髪避けられたけど、おまえらも気をつけろよ」
清音と瑠璃子はお互い目を合わせた。
偶然?違う。石の願いを叶えるスピードはかなり即効性がある。土曜の午後に願った事が日曜に…というのは遅い気がする。あの日、るぅが居なくなれと願ってしまった日、土曜日にもあったんだ。…本マッチョが避けたから、もう一度日曜日に実行された?…うん、きっとそうだ。そういう事だ。
先生としばらく病室で過ごした後、3人は部屋を出た。
「先生、一度は避けたんだね。けど、また実行されたって事っぽい」通路を歩きながら、清音は瑠璃子に話しかけた。正人は2人の後ろを歩いている。
「あ、そういう事?ああ、そっか。…まぁ、けど、良かった…本マッチョ元気で。ホッとした」瑠璃子は心底安堵したようだった。
「うん。『しばらく学校から居なくなる』で叶ったみたいだね。それに、なんか知らないけど、先生的にも良かったんじゃない?感動して、また頑張るぞーって感じになってたっぽいし……冷たい目の私がお見舞いに行った事で」清音は皮肉っぽく最後に一言付け加えた。
「なんだよ、気にしてんのか?」
「別に」清音は少し口を尖らせた。
「けど、先生と話してる時のさーやは、なんかロボットっぽくて確かにある意味結構怖い……あれ?」
瑠璃子は突然立ち止まり、自分のポケットの中を探り始めた。
「どうしたの?」清音も立ち止まって聞いた。
正人も止まった。
「いや、無くて」瑠璃子は自分の体を見まわしていた。
「何が?」そう聞きながら、清音は何気なく自分のポケットに手を入れた。左手が何かをつかんだ。外に出してみる。清音は自分の手のひらを見て固まった。あのインターネットで見た石、ラピスラズリそっくりな石が自分の手のひらに乗っかっている。
まさか……これ…
清音は左の手のひらを真下に向けてみた。
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