第3章

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「へ?」瑠璃子は何の事だろう?と、答えを求めるように清音に目をやった。清音は知らんぷりしている。 「おまえのせいだったのか!?あのテスト」正人は非難するような顔つきになっていた。  瑠璃子はそこまで言われて、しまったと言う顔をして、誤魔化すように口の端をあげた。  やばっ、テストの事すっかり忘れてた。  瑠璃子はチラッと清音に目をやった。  さーやのやつ、きっと、わかっててノート渡したに違いない。 「信じる」正人は突然そう断言した。「大体、あんなの、有り得ないんだ。あんなミスするわけないんだ。おまえのせいだったのか、くそっ……これ、先生に言うからな!」 「……いいけど、信じないと思うけどな。とりあえず本マッチョは信じなかった」怒っている正人をしり目に瑠璃子はケロッとしていた。 「るぅの頭がおかしいか、私と2人でからかってるって思ったみたい」清音が補足するように付け加えた。 「くぅ……他の先生に言うからな!うちの親にも」正人の顔は怒りで紅潮していた。  清音は小さく溜め息をついて、冷ややかに言った。「どうぞ、ご自由に。ま、多分、そんなに点数欲しいのかって思われるか、頭おかしくなったと思われるのがオチだと思うけど。親に精神内科とか連れていかれないように気をつけた方が良いかもよ」  正人は清音に何も返す言葉が出ない様子で、ただノートを握りしめる手に力を込めた。 「何点だった……」正人は唐突にそうつぶやくと瑠璃子を睨んだ。 「へ?」瑠璃子は何のことだ?とでも言いたげな顔をした。 「おまえ、理科のテスト、何点だったんだよ?」正人は瑠璃子に詰め寄った。 「あ、ああ、91点」瑠璃子は正人の迫力に押されぎみで答えた。  正人は自分の点数…つまり本来瑠璃子がとるはすだった点数とのあまりの差に言葉を失ったようだった。力なく肩を落としてうつむいてしまった。 「ごめん……な」瑠璃子は、正人の様子に思わず謝り、誤魔化すように頭をポリポリかきながら引きつった愛想笑いをした。  正人はチラッと瑠璃子に目をやっただけで、何も言わずにまたうつむいた。  あたしが体育でCをとったようなもんなんだろうな…きっと。…ホントに悪い事したかもしれない…。「ほんと、ごめん。先生に言っても良いからさ…」言っても信じないとさっき自分で言ったくせに、これしか言葉が出てこなかった。
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