第1章

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「例えば、こうやっても落ちない」瑠璃子はそう言いながら、左手をパーの形に大きく広げて手のひらを真下に向けた。 「落ちない?そこにひっついてるってわけ?見えないけど」  瑠璃子はうなずいた。「引っ張っても取れないし、こんな事しても離れない」瑠璃子は、ボールを投げるように左腕を大きく振ったり、左手首をぶんぶん振ってみせた。「で、唯一ポケットに入れるのはOKっぽい」  瑠璃子は石をポケットに入れた。と言っても、清音には石がどこにあるのか全くわからなかったが。 「なんだ、だったら、ポケットに入れたまま服脱いだら?」清音は簡単に離れるんじゃないの?と思いつつ提案した。 「やったさ。けど、勝手に左手に戻ってるんだよね。マジシャンもびっくり」瑠璃子は自虐的に言った。  清音は少し眉を上げた。「いつも身についてる状態ってわけ?」 「そうらしい」瑠璃子はうんざりしたように小さく溜め息をついた。 「確かにふつうじゃないね」るぅの言ってる事が本当ならば。だけど。  瑠璃子はうなずいた。「でさ、次の日、また招福堂のプリン食べたいなーって思ったら、またブーンって震えて光った。なんだろう?って思ってたら、お母さんが、昨日久々に食べたらまた食べたくなったって買って来て。そこで初めて、これ、もしかして?って思ってさ、その後3日連続で毎日プリン食べたいって思ってみた。案の定そのたびにブーンって光って…」 「は?あんた、バカでしょ」清音は呆れたように言った。 「いや、けど、すごいんだ」瑠璃子の口調に熱がこもった。「最初は、孫が来るはずが来れなくなったからってお隣のおばあちゃんがくれて、その次は、えーと、お母さんの知り合いの人がうち来て、手土産に持ってきた。で、最後は、卒業した先輩達が部活に来てさ、珍しく売れ残ってたって差し入れにプリン持って来てくれたんだ」瑠璃子は、な、すごいだろ?と言わんばかりの顔で清音をみつめた。言われなれているせいか、バカと言われた事は全く気にもしていないようだ。 「んー。確かにそれは偶然超えてるね」清音はあくまで冷静だった。 「で、ふと気が付いたんだけど、プリンのかわりに何かが無くなる」 「へ?……代償って事?」
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