第1章

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「なのに、そういう話が色んな所で出てくるって事は、なんかあるからに違いないって考えた方が自然だと思うわけ。だからちょっと肯定派寄りになる。私的にはすごく合理的な考えだと思うんだけどなー。理解されないよね。大体さ…」清音は自然と背筋が伸び、少し身を乗り出し、声のトーンも一段上がった。「地球が丸いってのも発表された当時は受け入れられなかったんだよ?地球は平面だって言うのがその当時の定説だったから。つまり、今の常識が絶対に正しいなんて言えないって事。そういう歴史があるにもかかわらず、どうして、見えないから、証拠が無いからって理由だけで否定できるのか、逆に私には理解できない」  清音の声はじょじょに熱を帯びていた。清音は普段は淡々と冷静すぎるくらいの話し方をするのに、こういう話になると熱く語ってしまう癖があった。  瑠璃子は口をポカンと開けて、半分流しながら清音の話を聞いていた。 「相変わらず、何言ってるんだか良くわかんないけどさ、さーやはさ、そう言うのがなきゃ、大人しそうな普通の可愛い子って感じなのにな」瑠璃子は何気なく言った。 「あ。そ。普通に可愛い子は、見えない石の話なんて絶対信じないだろうね」清音は皮肉を込めて返した。 「え、あいやー、さーやが普通でなくて良かった!普通でないさーやが良い!」瑠璃子は焦った様子で、明らかに作り笑いとわかる笑顔を見せた。 「なによそれ」 「大丈夫。さーやの事、そんなに良く知らないヤツは、頭良いちょっとかわいい普通の子って思ってるから。知ってるヤツは、まぁ、アレだけどさ…」瑠璃子は少しひきつった笑顔を浮かべた。 「なんか、さっきからひっかかる言い方するよね」清音は瑠璃子をジロッと見た。 「いや、フォローのつもりなんだけど」瑠璃子はアハハッとわざとらしく笑った。「けど、その石のお蔭で、ちょっとは幽霊とか信じる気になったんじゃないの?変人じゃなくても」清音は皮肉たっぷりに言った。 「へ?なんで?」瑠璃子は少し首を傾げた。 「その石だって、同じじゃない。見えないんだし。証拠もないし。言ったって誰も信じない」  瑠璃子は左手をみつめた。「同じ……かぁ?」と言いつつ、問いかけるような顔で清音を見た。  清音はうなずいた。「るぅにとってはその石が見えてるから違うだろうけど、私にとっては同じ。幽霊もその石も見えないし、あるって証拠は何もない」
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