Dark clouds

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*** 「これ、貸しにしておくわね」 「ありがとうございます。助かりました」  彼女の足音が完全に消えて私が呟くと、海はそう言って後頭部に添えていた私の手を離す。私がその隙を逃さず体勢を戻すと、彼はあからさまに不満そうな溜め息を吐いた。 「そんなあからさまに逃げなくても」 「そう思うんなら、腕をどけてくれない?」  体勢を変え、彼の腕の中から抜け出そうと抗うが、彼の腕はびくともしない。  それどころか、彼は楽しそうに私の髪に顔を埋める。 「だから・・・」  「うーん」  呆れたように横目で睨むが、そんなものはどこ吹く風だ。 「やっぱり、シャンプー変えました?」 「・・・」  この男は・・・ 「変えてないわよ。昨日は髪パックしたの」  観念して、話を聞かない男に言い聞かせる。  溜め息を吐くと、どこからか押し殺したような笑い声が聞こえてきた。
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