Dark clouds

13/17
前へ
/373ページ
次へ
「ああ、あれはもう七年も前になるか。このお嬢さんが、治療費の値切り交渉に来たんだよ」 「ネギリ・・・」 「そ。破産宣告に金がいるから、治療費を安くしてくれ ってな」 「・・・」  海は何も言わずに私を見る。が、その視線が痛かった。  居たたまれない  が、そんな心境の私のことなど構わず、綿貫医師は当事を思い出してか、喉の奥で笑っている。  父の主治医でもあったこの医師は、昔からどうにも食えぬ、タヌキのようなお人だった。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

694人が本棚に入れています
本棚に追加