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「ああ、あれはもう七年も前になるか。このお嬢さんが、治療費の値切り交渉に来たんだよ」
「ネギリ・・・」
「そ。破産宣告に金がいるから、治療費を安くしてくれ ってな」
「・・・」
海は何も言わずに私を見る。が、その視線が痛かった。
居たたまれない
が、そんな心境の私のことなど構わず、綿貫医師は当事を思い出してか、喉の奥で笑っている。
父の主治医でもあったこの医師は、昔からどうにも食えぬ、タヌキのようなお人だった。
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