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そんな私達に構わず、綿貫医師は続けた。
「一週間くらい前だったか。夜中に、手首を切って運ばれて来たんだよ」
「・・・」
「で、その時に処置したのが碧。何でも、親身になって話を聞いてくれたのが嬉しかったらしいぞ」
話し終わると、タヌキ先生は欠伸をして席を立つ。そのまま、渋い顔をしている海の横を通り抜け、自分のマグカップにコーヒーを注いだ。
「ま、人格障害の一種だ。これ以上は、精神科の分野だな」
そう言って、コーヒーを一口口に含む。
ごくりと喉を鳴らした後、新たにカップを用意すると、その中にコーヒーを注いだ。
「この件に関しては、お前に落ち度はない。あとは彼女の問題だ。分かったら、余計なことは考えるなよ」
その言葉と共に、綿貫医師は海の前にコーヒーの入ったカップを差し出す。
横で、海が小さく「はい」と呟いたのが聞こえた。
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